一〇八(仮)

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ライトノベル作家川口士のブログです。「魔弾の王と戦姫」18巻、それから片桐雛太さんの魔弾画集、11月25日発売です。よろしくお願いします。

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8月22日のお話

 皿屋敷ですよ。僕は番町皿屋敷という名前で覚えていたのですが、それは皿屋敷という怪談の江戸を舞台にしたバージョンなのですね。播州姫路が舞台の場合は播州皿屋敷というそうです。
 で、古典だけあって細部の違う話がけっこうあるのですが、番長皿屋敷だと、
・お菊という娘が下女として青山播磨守に仕える。
・お菊が播磨守の大切にしている皿を割ってしまう。
・播磨守はお菊の中指を切り落とし、それでも気がおさまらずに手打ちにすると言って監禁する。
・お菊はどうにか逃げだすも、古井戸に身を投げる。
・その後、古井戸から夜ごとに、皿の数を数える声が聞こえるようになる。また、播磨守の妻が産んだ子は中指を失った状態で生まれる。
・やがて、事件が公儀の耳に入って播磨守は所領を没収される。
・それからも古井戸の声は絶えなかったが、ある和尚が経文を唱え、皿を数える声に合わせて「十」と付け加えると、声は「あらうれしや」と言って、それきり聞こえなくなる。
 だいたいこんな流れですね。
 しかし、お菊が皿の数を数える理由って何だろうか。皿の数を数えて一枚足りないって嘆きたいのは、普通は皿を割られた方じゃないのか。
 他の怪談がそうであるように、お菊もまた怨念や執念を抱いて化けて出てきたと思われるわけです。
 皿を割ってしまったことを悔やんでいるのであれば、足りないなんて言い方をするでしょうか。足りないのはむしろ切り落とされてしまった指ですよ。
 十枚の皿が、かつての平和な生活の象徴ということだろうか。しかし、子供の指、播磨守の破滅という話の流れからして、お菊が播磨守を恨んでいるのは間違いないのです。しかも、お菊は幽霊として現れながらも、播磨守に取り憑いて殺すというような真似はしません。播磨守は公儀によって裁かれ、破滅するのです。お菊の声がきっかけとなったにしても。
 であれば、お菊の台詞は恨み言、なのではないだろうか。
 皿の数を数える声は、今風に言えば告発状であり、自分が死ぬきっかけとなった出来事を広めるための宣伝文句だったのではないでしょうか。
 だとすると、お菊は怨霊の中でもかなり狡猾な部類であり、優秀なコピーライターだったといえるのかもしれません。 



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by tsukasa-kawa | 2017-08-22 16:42 | 日常雑記