一〇八(仮)

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ライトノベル作家川口士のブログです。「魔弾の王と戦姫」18巻、それから片桐雛太さんの魔弾画集、11月25日発売です。よろしくお願いします。

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8月23日のお話

 昨日から東京に暑さが戻ってきたように思えます。ちょっと歩いただけですぐ汗が……。

 さて、四谷怪談です。僕もあらすじだけは知っていたのですが、やはり古典だけあってさまざまなバージョンがあり、忠臣蔵の外伝のような扱いをされているものもあるようです。
 また、怪談の元ネタとなったらしい実在したお岩さんは、実際には旦那さんとは仲睦まじく、二人でがんばってお家の復興を成し遂げたそうですね。当時はご利益があるとされ、お岩稲荷という信仰まであったとか。
 とまれ、怪談の方です。こちらでは仲睦まじいなんて言葉はかけらもなく、
・産後のひだちで病気がちになったお岩を、夫の伊右衛門は疎んじるようになる。
・そんな折、伊右衛門はある武家の娘と恋仲になる。娘の父親も二人のことを認める。
・伊右衛門はお岩のもとにひとりの男を使いに出して、不義密通をさせようとする。
・一方、娘の父親はお岩に薬と偽って毒薬を送る。その薬を飲んだお岩は顔が醜く崩れる。
・伊右衛門の使いの男は、醜い顔になったお岩を見ておびえ、伊右衛門の計画を暴露する。
・お岩は半狂乱になり、その使いの男と争ううちに命を落とす。
・伊右衛門はお岩の死体を、盗賊の死体とまとめて板にくくりつけて不義密通に見せかけて川に流す。
・伊右衛門は武家に婿入りするが、娘の顔がお岩の顔に見えて錯乱し、娘も父親も斬り殺す。
・伊右衛門は逃亡生活に入るも、川から板にくくりつけられたお岩の死体が流れてきて恨み言を吐いたり、店の娘や道端のかぼちゃや提灯などがお岩の顔に見えてしまうという現象に遭遇し、心を病む。
・お岩の妹の夫という人物が敵討ちとして伊右衛門を倒す。

 長くなりました。伊右衛門が何をやったか、それによってどんな目にあったかを書き連ねたからですが、まあ鬼畜といって差し支えないでしょう。お岩さんが化けて出るのもわかります。
 ただ、お岩さんが幽霊と化してまでやったことを挙げると、
・武家の娘の顔が、自分の顔に見えるようにした。
・死体として流れてきて恨み言を吐いた。
・店の娘やかぼちゃや提灯が自分の顔に見えるようにした。
 だけなんですね。怪談としてみればそれでも充分に怖いのですが、されたことを考えれば手ぬるい。
 前述したようにバージョン違いはいくつかありますが、お岩さん自身が伊右衛門の命を奪ったものというのは、ちと見当たらなかったんですよね。もしかしたら見落としただけであるのかもしれませんが。
 日本三大怪談と呼ばれているのが牡丹灯籠、皿屋敷、そしてこの四谷怪談なのですが、ターゲットの命を直接奪ったのは牡丹灯籠だけ。しかも牡丹灯籠は他の二作品とは違って復讐劇ではないわけです。むしろ近代、現代の怪談の方がターゲットを確実に仕留めてないかというぐらいですよ。
 幽霊のできることは、対象の人間の罪を自覚させる、あるいは対象の罪を広く知らしめることであり、人間は人間によって裁かれなければならないという通念が、この時代にはあったのかもしれません。まあ「社会的に抹殺する」っていうのは、現代においても非常に有効ですし、当時ならなおさらだったでしょう。
 その「社会的に抹殺する」を現代において実行するとなると、やはりネットやSNSの活用でしょうか。
 現代ならば、お岩さんもネット掲示板やSNSに自分の顔のアップをガンガンあげて、伊右衛門を社会的に抹殺するところから復讐をはじめるのやもしれません。



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by tsukasa-kawa | 2017-08-23 20:25 | 日常雑記