一〇八(仮)

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ライトノベル作家川口士のブログです。「魔弾の王と戦姫」18巻、それから片桐雛太さんの魔弾画集、11月25日発売です。よろしくお願いします。

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8月31日のお話

 8月も終わりだぞー。読書感想文はやったかー。観察日記はー。自由研究はー。
 僕はだいたいすっぽかしていましたね。20年以上も昔の話です。以前にも愚痴ったかもしれませんが、だいたい読書感想文なんて何書けばいいのかわからなかったもの。あと、思ったことを素直に書けばいいっていうのも当時は鵜呑みにしていたし。書き方がわかった高校生のころはもう読書感想文なんてなかったし。

 そんな月末ですが、さて牛の首です。
 2ちゃんねるに親しんでいたひとには鮫島事件、世にも奇妙な物語に親しんでいたひとにはズンドコベロンチョといえば、だいたいわかってもらえるかもしれません。
「昔、恐ろしい事件があったんだ。それを知っているひとたちの間では牛の首と呼ばれているんだがね……。内容は、いや、ちょっとここでは言えないな」
「牛の首か。悪いがあれについては話せない。ひどいものだったからな」
「ああ、牛の首ですね。名前だけは聞いたことあるんですけどね。何かすごい事件だったらしいですね」
 こんなふうに「何かえらい話だったらしい」という噂だけが一人歩きして真相はまったく語られず、知られることがないという話です。
 いやいや、このネット全盛の時代に?と思うかもしれませんが、ネットの記録など、かつて思われていたほどではないということがあきらかになりつつあります。プロバイダのサービス終了で、サーバーの容量の問題で、移転などに伴うデータ移行の失敗で、あるいはただのミスで、どれだけのデータが吹き飛び、復元が不可能となって消え去ったでしょうか。また、編集やねつ造、切り取りや上書きによって、どれだけの情報が歪んだ形で世に出回ってしまっているか。
 裏取りをせず、流れてきた情報に飛びつき、誤りと知らずに拡散し、尾ひれや背びれがつくという状況は、情報の加速化によって悪化しています。記憶は嘘をつくといいますが、記録もたいがいなのです。

 と、てきとうにそれらしいことをつらつら並べたところで話を戻しますと、牛の首がほとんどのひとに忘れ去られてもズンベロや鮫島が生みだされ、記憶に残るように「実体のない凄い話」は定期的に出てくるのでしょう。底の知れない噂話として。
 もちろん話を自由につくることはできますが、元が実体がないのですから、自分以外の誰かも話をつくってきたら、どちらが本物かという流れになり、いずれどちらも偽物と判明すると思われます。
 あるいは、何かしら力のある(ここでいう力とは、とくにオリジナリティや説得力のことではない)話がくっつけられて、ひとつの話として成立してしまったら、それは牛の首ではなく、新たな怪談となるのかもしれません。



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by tsukasa-kawa | 2017-08-31 15:54 | 日常雑記