一〇八(仮)

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ライトノベル作家川口士のブログです。「魔弾の王と戦姫」18巻、11月25日発売です。よろしくお願いします。

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9月10日のお話

 1円玉の直径はぴったり2cmです。そして一寸とは3.03cmで、だいたい1円玉1個半ぐらいと思っていただければよいでしょう。
 それが一寸法師の全長です。キン消しかな?
 こんなサイズの赤ん坊では、生まれて0.5秒で窒息というか、そもそも出てこられるのかよという疑問がありますが、シモの話を続けては僕のなけなしの品格に関わってきますので、とにかく無事に生まれてきたんだということにしましょう。それでは一寸法師です。

 子供のない老夫婦がせめて親指ほどの大きさでもいいので子供を、と神仏に祈ったら本当にそのサイズの子供が生まれ、その大きさのまま成長した。
 一寸法師と名づけられたその子は武士になるために京へ行くことにし、お椀の舟で川を下る。
 京に着くと、とりあえず偉いひとの家へ仕官に行き、働かせてもらうことになる。
 その家の娘と宮参りに行った際、娘をさらおうとして現れた鬼と戦い、やっつけて打ち出の小槌を手に入れる。それによって人並みの大きさになり、さらに打ち出の小槌から財宝も手に入れて末代まで栄えた。めでたしめでたし。

 すげえな打ち出の小槌。わざわざさらおうとしなくても「人間の絶世の美女出てこーい」って言ってこいつをガンガン振ったら出てくるんじゃないの。SSR出ませーい出ませーい(ネットでかじった言葉です)。

「一寸法師」にもいろいろバージョンはありまして、一寸法師が寝ている娘の口に米だかあんこだかを塗りたくり「俺の飯を食われた」などと濡れ衣を着せて仕官先の家から好条件を引きだすというナニワ金融道か極悪がんぼに出てきそうなものもありますが、その後、別に悪知恵で鬼を追い払うわけでなし、上記のような感じで、勇敢で冒険心にあふれた若者ということでいきましょう。アリエッティだってヤカンで川を旅したのにこいつはお椀ですからね。

 さて、そんな一寸法師と対峙した鬼はどう思ったでしょうか。キン消しですからね、大きさ。針を持っているとはいえ、舐めてかかるのも仕方ないかもしれません。そんな一寸法師を、鬼は一呑みにしてしまいます。過失があったとすれば、針ごと呑みこんでしまったことでしょうか。
 鬼の胃袋が人間と同じ構造なら噴門が閉じてしまうので、一寸法師は誕生以来の窒息の危機に見舞われ、暴れるどころではないと思うのですが、胃袋の構造が違うのか、一寸法師は酸素を必要としないのか、彼は胃袋を内側からめった刺しにして鬼を痛めつけ、追い払います。
 ここで鬼は打ち出の小槌を落としていきました。これを使えば逃げる必要などはなく、逆転の道はいくらでもあったはずでした。胃袋の中に何かを入れて一寸法師を苦しめるとか、一寸法師が口から飛び出た後に虫を出して襲わせるとか、手はあったのです。
 ですが、鬼はそういった行動を取りませんでした。使うそぶりさえ見せなかったあたり、もしかしたら打ち出の小槌を使いこなせなかったのかもしれません。
 このお話に教訓があるとすれば、己の武器を上手く使えない者が負けるというところでしょうか。一寸法師の武器である小ささを、鬼は何らかの手段で無力化するべきだったのです。鬼の武器である巨体も何もかも、胃袋の中に逃げこまれることで無力化されたのですから。



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by tsukasa-kawa | 2017-09-10 23:59 | 日常雑記