一〇八(仮)

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ライトノベル作家川口士のブログです

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9月20日のお話・他

 あちきぃー、結婚相手はぁー、年収1000万でないとやだぁー。
 そんな、煮立った味噌汁で顔洗ってこいやと言ってやりたくなるような輩は幸い僕のまわりにはいませんでした。今日も界隈は平和です(まわりにひとがいないだけじゃないかな?)。
 さておき、今日は富士見ファンタジア文庫の発売日なのでした。
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葵せきな   ゲーマーズDLC

アニメ放映中のゲーマーズ。ドラマガに連載した短編に書き下ろしを加えた外伝です。興味を持たれたら是非。


 さて、結婚は古今東西、そういう文化ができた地域においてネタにされないことがないぐらいの代物ですが、昔話においても例外ではありません。当事者同士の自由意志による恋愛結婚がごく少数で、基本的には親や家が相手を決めていた時代であっても、困難はやはりあったのです。それでは始めましょうか。「ねずみの婿取り」。流れはこんな感じです。

 あるねずみが、そろそろ娘に婿をとらせようと考え、せっかくだから天下一の者を婿にしたいと思い立つ。
 太陽こそは世に並ぶものがないだろうと考え、交渉に向かうも「私は雲が出てしまうと無力だから、雲を婿にしてはどうか」と言われる。
 それではと雲のところへ向かうと「私は風に吹かれると無力だから、風を婿にしてはどうか」と言われる。
 それではと風のところへ向かうと「私は土塀を吹き飛ばせず無力だから、土塀を婿にしてはどうか」と言われる。
 それではと土塀のところへ向かうと「私はねずみにかじられると無力だから、ねずみを婿にしてはどうか」と言われる。なるほどと、父親ねずみは、ねずみを婿に取った。

 たらいまわし! 見事なたらいまわしです。どいつもこいつも無機物の分際で、自分を卑下して面倒ごとを回避し、よそへぶん投げるサラリーマン的小技を巧みに披露しています。そもそも太陽とねずみが結婚したらどうなるんだろう。ねずみのロースト一丁あがりで終幕なんじゃないか。
 とはいえ、娘にできるだけいい婿を迎えたいという父親ねずみの心情はわかります。結ばれれば長いつきあいになるんだから人選にもそりゃあ気を遣いますよね。
 問題は、たらいまわしにされるぐらいに要求が漠然としすぎていたところにあったのでしょう。父親ねずみには、何をもって天下一とするかの基準がありません。ですので相手の主張を受け入れるしかなく、次々によそへまわされてしまうのです。
 太陽、雲、風、土塀の力関係でいえば、太陽は風に揺らぐことがなく、位置によっては土塀に遮られずに地面を照らすこともできる。雲に遮られることにしても永遠ではなく、いつかは姿を見せるのです。同じことは雲、風、土塀にももちろんいえます。

 結婚は、夫と妻が協力して新たな生活をつくりあげるものです。家父長制が強かった時代は、家同士の話しあいで新たな生活がつくられることもあったでしょう。その善し悪しは置いておくとして、重要なのは新たな生活のイメージです。自分だけでできるものではないのですから、おたがいのイメージを交換し、尊重できるところは尊重し、譲れないところは譲らず、受け入れるべきは受け入れる。それができなければ、たとえ形を作っても長続きはしないでしょう。
 それを思えば、生活や価値観が同じか、あるいは非常に近いであろうねずみを婿に選んだこの結末は、笑い話のオチという以上のものがあるのかもしれません。



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by tsukasa-kawa | 2017-09-20 21:40 | 日常雑記