一〇八(仮)

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ライトノベル作家川口士のブログです

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9月23日のお話

 転がったおむすびを追っていった先にあったのは地下帝国ネズミーランドでしたー!
 短くまとめてしまうと、だいたいこんな感じのお話なのが「おむすびころりん」です。それにしても雀といい、ねずみといい、害獣であるほど昔話の中では恩義に厚いのはどうしたことでしょうか。おそらく、身近すぎる生物だったからだと思われますが。
 あらためて、物語の流れをざっと追っていきましょうか。とはいえ、有名なものだけあってバージョンが極端に違うのですけれどね。

 山で仕事をしていたお爺さんが、昼時になっておむすびを食べようとするが、誤って地面に落としてしまう。
 おむすびは斜面を転がって、木の根元にある大きな穴に落ちる。すると「おむすびころりん、すっとんとん」という歌声が聞こえる。
 不思議に思って穴を覗きこんだお爺さんは、うっかり落ちてしまう。穴の中にはねずみたちがいて、おむすびのお礼に財宝をくれる。
 帰ってきたお爺さんから話を聞いた近所の欲張りお爺さんは、大量のおむすびを持って山に行き、おむすびを残らず穴に投げこんでから、自分も飛びこむ。
 欲張りお爺さんはねずみを威嚇して財宝を出させようとするが、怒ったねずみに逆襲され、大怪我を負って逃げ帰る。

 欲張りお爺さんが破傷風で息を引き取る未来しか見えないのがつらいところです。
 バージョンによっては、ねずみはお爺さんに歓迎の宴を開いた上で、二種類のつづらを選ばせるという舌切り雀みたいな流れとか、欲張りお爺さんが出てくるくだりは全面カットとか、いろいろあるのですが、上記の話をベースにするとしましょう。
 そもそも、おむすびってそんなに転がるんでしょうか。地面に落ちれば土がつくし、傾斜があってもでこぼこしているし、小石や木の根だってあるでしょう。偶然を装ったように見せかけて、ねずみたちはお爺さんを穴の中に導いたのではないでしょうか。おむすびを失ったお爺さんの反応を見るために。
 穴の中の世界の広さを考えても、この山はねずみのテリトリーです。山ひとつ丸ごととまではいわないまでも、かなりの部分をおさえていると考えていいでしょう。そして、お爺さんはそこに踏みこんできた侵入者ということになります。
 もっとも、お爺さんはおそらく山で長いこと仕事を続けてきたのでしょうし、この段階でねずみが接触してきたと考えると、お爺さんが山の中で仕事場を変えたか、ねずみが徐々に領域を広げてきたか、というあたりだと思われます。ともかく、二人のテリトリーが重なってしまった。そこで、ねずみはお爺さんと共存関係が望めるか、試したのではないでしょうか。
 さらに想像をふくらませるならば、こうしたお爺さんが後々、山の主と対話できる老人、などになるのかもしれません。



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by tsukasa-kawa | 2017-09-23 23:59 | 日常雑記