一〇八(仮)

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ライトノベル作家川口士のブログです。「魔弾の王と戦姫」18巻、それから片桐雛太さんの魔弾画集、11月25日発売です。よろしくお願いします。

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9月28日のお話

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>スーパーピンチクラッシャーの突然の登場にちょっと笑ってしまいました。せめて当時の概念に存在しそうな物を呼びましょう。正義の山姥とか呼んで対消滅させると良かったかもしれません。
 オルタレイションですら5年も前だというのにわかるひとがいるとは……! 正義の山姥が出てくると、小坊主がバトル漫画における解説者ポジになりそうですね。当時の概念でいうと、他には神仏や龍などが考えられますが、小坊主のレベルを考えるならたしかに山姥あたりが妥当でしょうか。

 さて、突然ですがクイズは好きですか? 「俺の名を言ってみろ」「ジャ(銃声)」「ざんねーん。正解はケンシロウでしたー」みたいな。僕も小さなころはクイズダービーやSHOWBYショーバイ、アタック25、100人に聞きました、などを観ていたものです。
 昔話にも、相手に対してクイズ、いわゆる謎かけをする内容のものがあります。そのひとつである「大工と鬼六」いってみましょうか。

 昔々、あるところに流れのたいそう速い川があった。大工が何度も橋を架けたが、すぐに流されてしまう。
 困り果てて川辺に立ち尽くしていた大工の前に、ひとりの鬼が現れる。鬼は、自分なら一晩で頑丈な橋を架けられると言い、おまえを喰らうのと引き替えにやってやると提案する。
 大工はやれるものならやってみろという気持ちでその提案を呑むが、翌日にはもう橋が半分できていた。
 明日にはおまえを喰らうと言う鬼に、大工は必死に懇願し、鬼は橋の完成までに自分の名前を当てることができたら喰らうのを諦めると言う。
 困り果てて大工が山の中を歩いていると、鬼の子供が子守歌を歌っているのを見つける。その子守歌の内容から、大工は鬼の名前が鬼六であることを知る。
 翌日、大工が鬼の名前を言い当てると、鬼は川に沈んで二度と姿を見せず、橋はどんな大雨でも流されることはなかった。

 怪異が人間に謎かけをして、解けなかった場合に代償を求める。外国産だとスフィンクスの逸話が有名でしょうか。
 なんで名前を当てられたぐらいで、という疑問はあるでしょうが、名前を大事にし、家族など特定の人物にしか教えないという文化は世界各地にあったのです。日本においても、わかっているかぎりでは平安時代のころからありました。幼名と元服後とで名前を変えていたのも、本当の名前を隠すためだという説があります。本当の名前、真の名を知られるというのは、命をつかまれるに等しいぐらいのものだったのでしょう。恋姫夢想でも真名を大事にしていますしね。

 しかし子供に何歌わせとるんですか、鬼六さん。子供を遊ばせてなければただ働きをせずにすんだのに……といいたいところですが、このお話もバージョンはいろいろありまして。鬼六が命までは取らずに目玉を要求するものから、大工が鬼六の名前を知る方法が、村に伝わる歌や、自分の妻が子供に聴かせてやる子守歌、山の中で鳥が歌っていた歌など、さまざまです。
 大工はとにかく何らかの手段で鬼六の名を知ってしまうのです。知られないようにするという方法は、おそらく無理でしょう。
 ならば、その逆をいくしかありません。せっかく鬼六なのですから、山の鳥には鬼五と歌わせ、子守歌には鬼四と吹きこみ、村に伝わる歌には鬼三と言い、大工の前に現れるときにはうっかり大量の名札を落とすなどの手を打つのです。デマを振りまくというのは情報戦において有効な手ですからね。 

 それにしても、こうして後の世に話が伝わったとき、大工は名前のないただの大工として語られ、鬼は鬼六という一個人として語られる、というのは何とも不思議な感じを与えてくれます。名前を大事にする文化の中ではそれが正しかったのだとしても。
 


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by tsukasa-kawa | 2017-09-28 10:52 | 日常雑記