一〇八(仮)

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ライトノベル作家川口士のブログです。「魔弾の王と戦姫」18巻、それから片桐雛太さんの魔弾画集、11月25日発売です。よろしくお願いします。

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10月14日のお話

 トントン
「誰だー?」
「かあちゃんだよ」
「ほんとにかあちゃんか? じゃあ次の問題に答えてみろー。子ブタの住むレンガの家に入る方法は?」
「そりゃあ煙突から」
「おまえ狼じゃねえか!」

 西洋では、狼というのはよほど凶悪で、獰猛な存在のようです。これまで語ってきたものだと「三匹の子豚」や「狼と羊飼い」などがありますが、三匹の子豚においては、狼は力強さを示して藁の家や木の家を破壊し、レンガの家に対しても狡猾さを発揮して、あと少しというところまでいきました。狼と羊飼いにおいても、少年の叫びを聞いて、大人が数人がかりで駆けつけてくるほど警戒されています。語っていないものだと「赤ずきん」あたりが有名でしょうか。こちらもずる賢いですね。
 それでは「狼と七匹の子ヤギ」いってみましょうか。やはりずる賢い狼の出てくる物語です。

 母ヤギが町に出かけ、七匹の子ヤギが留守番をする。
 そこへ狼が母ヤギのふりをしてドアを叩く。子ヤギたちは「そんな声は母さんじゃない」と言って追い返す。
 狼はチョークを食べて声をよくして再挑戦。しかし、ドアの覗き穴から見えた脚に「この脚は母さんじゃない」と言って追い返す。
 狼はパン屋で小麦粉を調達して脚に塗り、再挑戦。今度はだますことができて、狼は侵入するや子ヤギをかたっぱしから丸呑みにする。七番目のヤギだけは隠れることができて助かる。
 狼が去ったあと、母ヤギが帰ってきて、七番目から事情を聞く。外に出て狼をさがすと、川辺で昼寝をしているところを発見する。
 母ヤギは七番目にハサミと針と糸を持ってこさせ、狼の腹を割く。丸呑みにされていた子供たちは六匹とも無事に出てくる。
 母ヤギは子供たちに石ころを持ってこさせ、狼の腹に詰めこんだ上で針と糸で腹を縫う。
 目覚めた狼は腹の重さに苦しみながら水を飲もうとして落ちてしまい、おぼれ死ぬ。めでたしめでたし。

「丸呑みだから無事」という、洋の東西を問わない理不尽なルールはひとまず横に置くとして、麻酔なしで切開とかブラックジャックも真っ青ですよ、母ヤギ。患者は目覚めませんからね。このテクニック、狼が母ヤギの留守を狙ったのもうなずけます。このヤギ一家に父親が出てこないのは、たぶんこの恐ろしいテクニックの餌食になったのでしょう。
 腹に石を詰めこまれておぼれ死に、というのは、まあ救出劇がなければ六匹の子ヤギが消化されて狼の血肉となっていたわけですし、母ヤギの技術を考えると、ぬるい方だと思っていいのでしょう。生皮を綺麗に剥いで表側を肉に縫いつけるとかしそうじゃん、この母ヤギ。
 それにしても、狼は詰めが甘かった。いや、母ヤギを甘く見ていたのでしょうか。目的を果たしたからには、相手が確実に追ってこられないエリアまで逃げるべきでした。遠足は家に着くまでが遠足であり、途中で足を止めては、まだミッションクリアではないのです。
 まあ、母ヤギの技術と復讐心を考えると、狼が逃げきったら逃げきったで、生き残った子供を連れて母ヤギがさすらいの旅を続ける子連れ狼ならぬ子連れヤギの物語がはじまるかもしれませんが……。



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by tsukasa-kawa | 2017-10-14 23:41 | 日常雑記