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ライトノベル作家川口士のブログです

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2017年 09月 16日 ( 2 )

9月16日のお話・2

 小さかったころ、家では金魚やセキセイインコを飼っていました。世話は主に父や母、弟がやっていまして、僕はたまにその手伝いをするぐらいだったんですけどね。
 金魚は水槽から出ることなく、インコもまた部屋の中から出ることがなかったのですが、彼らは何を言っていたでしょうか。隔離されていた、つまり情報の少なかった世界だったので「飯、寝る」ぐらいだったかもしれませんし、餌の内容や、家族ひとりひとりについて論評していたかもしれません。

 さて、聞き耳頭巾です。昔々あるところにいたお爺さんが、困っていた子狐を助け、母狐から頭巾をもらうところから話ははじまります。その頭巾をかぶってみると動植物の言葉が理解できるようになり、彼らが何を話しているのかがわかるという寸法です。
 そして、動物たちは人里での生活に慣れすぎたのか、人間界のゴシップしか話していません。川の中に金塊が転がっているのに人間が気づいていないだの、長者の娘が病気になっただの、それは楠の呪いだの、長者が新たに建てた蔵が楠の根を傷めているからだのと、どれだけ人間界に関心があるのかというぐらいです。
 もっとも、それを知っていたからこそ、母狐はお礼の品として頭巾をお爺さんに渡したのでしょう。頭巾をかぶってみても、今朝つついてみたミミズがまずかったとか、畑にまかれていた豆を一粒残さず食ってやったとか、そんな話ばかり聞かされる羽目になってはお爺さんへのお礼になりません。
 話を戻しますと、動物たちの会話を聞いたお爺さんは、長者の娘を病から回復させて、長者から褒美を受けとりました。めでたしめでたし。

 作中では、お爺さんと話しあった楠を除いて、お爺さんが会話を聞いていることに動物たちは気づいていません。そして、彼らの会話はあきらかに人間に聞かれていない前提のものです。しかし、人間界のゴシップには耳ざとい畜生たちです。お爺さんが長者の娘の病を治したこと、その方法、はたまた狐の母子の出会いについても、数日中には知ることと思われます。
 そのとき、彼らはどのようなアクションをとるでしょうか。
 ゴシップが楽しいのは他人事だからです。お爺さんが人間界で何をしようと動物たちにあまり影響はないでしょうから、たいして気にしないかもしれません。ですが、彼らのメンタルは人間社会の塵芥にまみれたせいか人間にかなり近いので、盗み聞きされたと感じてお爺さんを露骨に避けることも考えられますし、これ幸いとばかりに自分たちの要求を訴えてくる可能性もあります。
 聞き耳頭巾の物語は、むしろここから始まるのかもしれません。



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by tsukasa-kawa | 2017-09-16 23:59 | 日常雑記

9月16日のお話

 声高に時代は超高齢社会だとコメンテーターが不吉な予想図立てて闇にまくしたててますよ。こんばんは皆さん。そしておやすみなさい。
 まああれです。挨拶をした手前、どこかで調整しなければならんかったしのう。
 さて、姥捨て山です。もとは中国やインドから伝わってきたといわれる、だいぶ古いころからある物語ですね。

 お殿様が、年寄りは不要であり捨てるべしという布告を出す。ひとりの男が仕方なく年老いた母親を捨てようとするも、思い直して家の床下にかくまう。
 その後、隣国がお殿様に何度か難題を突きつけ、男はその答えを母親から教えてもらって隣国を追い払い、それを知ったお殿様は布告を撤回する。

 バージョン違いとしては、母親を捨てようとする男に、息子が「父親を捨てる時のためにやり方を知りたい」と言って同行をせがみ、それによって自分の行為の恐ろしさを悟った男が母親を捨てるのをやめる……というものがありますが、共同体で語り継ぐお話としてはこちらの方が妥当かもしれません。上のお話の方が痛快さはありますが、知識も技術も培ってこなかった老人は捨ててもいいという解釈を招きかねませんからね。たとえば不作の年に、口減らしのために子供を売る、老人を捨てるといったことはどの地域でもあったでしょうが、それとこれとは意味が違います。

 しかし、捨てられた老人たちにしてみれば、だからといって山中でのたれ死ぬ理由はありません。法の外に置かれたのですから、法を守る理由もない。
 この場合、老人たちがとる手段は二通り考えられます。
 ひとつは、集まって山の中にコミュニティを築くことです。いちいち遠くの山に捨てているという描写はありませんから、老人たちが小さいころからよく知っているような山に捨てていると考えていいでしょう。つまり、何がどこで採れるか、川の流れ、獣のねぐらなどについて、おおまかに知っていると考えられるわけです。熊や野犬など獣の存在が脅威ですが、獣避けの柵などを備えた拠点を作ることができれば、いつかは棲み分けができるでしょう。というかできなかったら全滅です。人里でしか手に入らないものが必要になった場合は、木の実や薪になる枝など、山でしか手に入らない、又は山で集めないと効率が悪いものを用意して物々交換する手がある。
 人口については、布告が撤回されないかぎり定期的に送りこまれてくるので、山に相応の食糧があり、獣たちとやりあえる老人たちが一定数そろえば強力なコミュニティができあがりそうです。老練や老獪という言葉は、適当につくられたものではありません。

 もうひとつは、集まって山の中で食糧になりそうなものをかき集めたあと、隣国へ逃げることです。隣国のお殿様に謁見して「うちの国の殿様はこんなことをしたのです。いま、うちの国の若者を煽れば混乱を起こすことは簡単です」と教えれば、褒美ぐらいはもらえるでしょう。本作の男がまさにそうでしたが、お殿様の布告に納得していない者は多数いるはずです。そうした者たちは、情のない布告を出したお上を恨んでも不思議ではありません。さらに隣国のお殿様が太っ腹だったら、逃げてきた老人たちに金をやって煽動役に使うでしょう。
 あるいは、老人しか答えを出せない難題を隣国のお殿様が用意できたのは、そのように隣国へ逃げた老人がいたからなのかもしれません。



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by tsukasa-kawa | 2017-09-16 02:01 | 日常雑記