一〇八(仮)

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ライトノベル作家川口士のブログです

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2017年 09月 18日 ( 1 )

9月18日のお話

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>年を重ねた古い竜はより格の高い竜へと進化するという話はよく聞きますが乙姫が龍の価値観で玉手箱を託したのならお礼にクラスチェンジさせてあげましょうぐらいの心持ちだったのでしょうか
 浦島太郎の話ですね。たしかにそれもありそうです。人間でクラスチェンジとなると、仙人にしてあげようというあたりでしょうか。中国の説話の中には、ある人間が仙人になったとき、身体は煙に包まれて跡形もなく消え去り、後には服しか残っていなかったという話もありますからね。

 さて、いろいろな日本昔話を語ってきていますが、鬼と並んで恐ろしい存在である山姥が出てきたものは、まだなかったですね。金太郎の母親が山姥だったという説があるぐらいかな。
 山姥というと、どんなイメージでしょうか。字面でいえば山の老婆ですからね。20年ぐらい前に渋谷にたむろしていた面白化粧の女の子らとはむしろ対極にあるといっていい。昔話における一例としては、旅人を泊めた夜に、台所で不気味な笑い声をあげながら大きな包丁をしゃりしゃり研いでいる老婆のイメージがわかりやすいでしょうか。
 人間に近い姿を持ちながら人間ではなく、怪力など人間にはない力の持ち主。それが山姥です。人間を好んで喰らうタイプのおっかない山姥もいれば、山に入った人間から事情を聞いて幸運を授けてくれるタイプもいるので、老婆の姿を借りた山の精霊と考えるべきかもしれません。

 とまあ、前振りも終わったところで人間を喰らうタイプの山姥が出てくる「天道さんの金の鎖」です。地方ごとに割と細かくタイトルが違うので、このタイトルでは馴染みの薄いひともいるかもしれませんね。「お月さんと金の鎖」「親子星」などがあります。大筋はこんな感じですか。

 ある日、母親が三人の子供に留守番を頼んで山へ薪拾いに行く。母親は山で山姥に遭遇し、食われてしまう。
 山姥は子供たちのいる家へ行き、言葉巧みに母を装って中に入りこむ。そして、夜になるのを待って三男を食べてしまう。
 暗がりの中でその音を不審がった長男に、山姥は適当にごまかす。自分にもくれとせがむ長男に、山姥は三男の指を放る。
 母親ではなく山姥だと悟った長男は、次男を連れて逃げる。山姥はそれに気づいて追いかけてくる。
 追い詰められた長男は、天の神に祈る。すると、金の鎖が天から降りてきて、長男と次男はそれにつかまって逃げる。
 追いかけてきた山姥も、同じく神に祈る。すると、腐った縄が天から降りてきて、それにつかまって山姥は長男たちを追おうとしたが、縄が切れて地面に落ちて死ぬ。

 食い残した指を放って正体がばれたり、腐った縄に飛びついて落下したり、この山姥はかなり隙だらけです。とはいえ、年端もいかない子供たちでは、これぐらいの相手でなければ「オレサマオマエマルカジリ」と立て続けに喰われて話が終わっていたと思うので、これぐらいがいいのでしょう。
 しかし、さすがに腐った縄が降りてきた時点で、山姥は諦めるべきでした。天の神もここまで露骨に追うなと警告してくれているのは、かなりの温情と言わざるを得ません。それでもなお山姥が子供たちを追おうとしたのは、あるいは正体を見破られたためでしょうか。この縄でもいけると過信したのでしょうか。
 バージョンによっては、金の鎖をのぼっていった子供たちは星になります。見方を変えるなら、天の神のものになるということです。
 山姥が山の精霊(善悪は置いて)であるならば、自分の獲物を天に奪われないために無理をしたのかもしれません。



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by tsukasa-kawa | 2017-09-18 23:59 | 日常雑記