一〇八(仮)

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ライトノベル作家川口士のブログです

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2017年 10月 09日 ( 1 )

10月9日のお話

 ぐあっ! 美しい!
 美はパワー。超常的な美しさは、見る者を圧倒し、悪党を殲滅し、なんだかんだ世の中を平和にするそうですよ。
 仕事柄、休日はほとんど関係ないのですが、三連休もそうでした。いまだにずれの調整もできていませんが、これ以上空けないようにはしたい……。あと、読者の方は来月に出る本をお待ちくださると嬉しいです。
 さて「白雪姫」。有名なのはグリム版。映像ならディズニー版でしょうか。白雪とは、雪のように白い肌からきているわけですが、彼女はすばらしい美貌の持ち主だとされているのに、髪や瞳や唇などではなく肌の白さが名前になるというのはすごいものです。どれだけ美肌だったんだ。
 さておき、まずはあらすじを見ていきましょうか。

 ある国に、白雪姫という美しい王女がいた。
 その国の王妃は魔法の鏡を隠し持っており、毎日、鏡に向かって「世界でもっとも美しいのは誰か」と問いかけては「王妃様です」という答えを聞いて満足していた。
 ところがある日、いつもの質問に対して鏡が「白雪姫です」と答えた。王妃は嫉妬に狂い、白雪姫を殺そうと考える。
 王妃は猟師に白雪姫の殺害を命じる。しかし、猟師は白雪姫を森に連れていったところで殺すことをためらい、置き去りにする。王妃には仕留めた動物の肝臓を、白雪姫の肝臓だと言ってさしだす。
 王妃が安心したのも束の間、鏡はいつもの質問に「白雪姫です」と答える。王妃は再び白雪姫の殺害をくわだてる。
 一方そのころ、白雪姫は森の奥の洞窟で暮らす七人の小人のところに住みこんで、家事をがんばっていた。
 王妃は腰紐売りに化けたり、櫛売りに化けたりして白雪姫の殺害をたびたび試みるが失敗、林檎売りに化けて毒林檎をかじらせ、ようやく成功する。
 白雪姫が死んだと思って悲しむ小人たちのところに、王子が現れる。王子は白雪姫に一目惚れし、死体でもかまわないからと小人たちから引き取る。
 白雪姫の入った棺を担いでいた家来がけつまずき、その拍子に白雪姫は毒林檎を吐きだしてよみがえる。
 王子と白雪姫の披露宴の席で、王妃は焼けた鉄靴を履かされて、死ぬまで踊らされる。

 バージョンによっては、白雪姫は喉に詰まっていた毒林檎のかけらを吐きだしてよみがえる、とかなっていて、じゃあこの子って毒は関係なくて窒息死だったの? とか思うところはあるのですが、ゲーム的に毒で戦闘不能とかそんな感じで捉えればよさそうです。
 それから王子、どうも他国の人間のようなんですが(自分の国に連れ帰って妻とした、というバージョンがある)、白雪姫や王妃にしたことを考えると、王妃の国を征服しておそらくは最高権力者である王妃を処刑し、その後継者を妻にして併合したとかそんなオチなんじゃないだろうか。それだと、死体でもかまわないからと引き取った理由にはなるんですよね。死んでいることを隠して(せめて結婚式が終わるまで)妻にして、形式上でも国をものにするという……。

 それにしても、なぜ王妃はここまで白雪姫を殺害することに固執したのでしょうか。もちろん、彼女を殺害すれば自分が「もっとも美しい存在」に返り咲けるからなのですが。
 では、美しさとはなんでしょうか。身体の一部に限定して「美しい髪」「美しい瞳」などと言うことがあります。また、善良であることを「美しい心」と言うこともあります。信念を貫く毅然とした態度や、長い年月をかけて技術と経験を染みこませた、傷だらけの職人の手に美を感じることもあるでしょう。
 万人が認める美とは、あるのでしょうか。魔法の鏡ならば、それを知っているのでしょうか。

 王妃は、白雪姫より美しくなかったのでしょうか。たとえば髪、あるいは瞳、唇など、すべての点で、美しくなかったのでしょうか。おそらく、そんなことはなかったでしょう。
 ですが、王妃は魔法の鏡の言葉を疑いませんでした。魔法の鏡は嘘を言わないからです。より正確には、鏡は嘘を言わないと、王妃は信じているからです。そう信じることによって、自分の美しさに自信を持つことができていたからです。その意味で、王妃の美しさは鏡によって支えられたものでした。

 どんなものであれ、ある日突然違うことを言えば、まずは故障を疑うのではないでしょうか。
 しかし「白雪姫がもっとも美しい」と鏡が言った時、王妃は鏡がおかしくなったとは思いませんでした。
 ひとつには、王妃も内心では、白雪姫の美しさを認めていたからだと思われます。
 もうひとつは、王妃は自分を美しいと思えなくなってしまったからでしょう。自分の中に基準があれば「そんなことはないでしょう。この爪とかあの子より綺麗ではなくて?」とか反論できたはずです。「あんな知性の感じられない騙されやすい小娘のどこがいいのさ」ぐらいは言ったかもしれません。だからこそ、王妃は白雪姫を殺すしかありませんでした。それ以外に美しさを取り戻す方法が、彼女にはなかったからです。
 もしも王妃に自分を美しいと思えるだけの自信や、美肌が強調されている小娘なんぞに負けてたまるかと美貌を磨く意地があれば、このお話も違った展開を見せたかもしれません。



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by tsukasa-kawa | 2017-10-09 23:16 | 日常雑記