一〇八(仮)

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ライトノベル作家川口士のブログです。「魔弾の王と戦姫」18巻、それから片桐雛太さんの魔弾画集、11月25日発売です。よろしくお願いします。

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新刊紹介

 実況? 何のことかね?(白々しい顔で

 あと15分と少しで日が変わってしまいますが、本日は拙著「魔弾の王と戦姫」18巻及び「片桐雛太画集」の発売日です。
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 2011年の4月にはじまった本作は、本日をもって無事に完結を迎えることができました。1巻の原稿を書いていたとき、売れなかった場合に備えて1巻~3巻で完結できるようにしておこうと、当時の編集担当さんと話しあったのが遠い昔のようです(まあ7年前だしね)。
 3巻どころか、この物語で書きたいと思っていたことを書き抜くことができました。6年半の長きにわたって応援いただき、本当にありがとうございます。こうして並べてみると、長い戦いだったと。みなさまにおかれては、この18巻までよく辛抱強くつきあってくださったと。幸甚の至りです。

 そして「片桐雛太画集」には、2014年5月発売の9巻から約4年、10冊にわたって本作のイラストを手がけてくださった片桐さんの数々の美麗なイラストがおさめられています。本作のイラストはもちろん、描き下ろしに加え、各種特典や冊子で描いていただいたもの、それから片桐さんがイラストを担当されていた「風に舞う鎧姫」のイラストも収録されています。また、僕も本編の後日談となる短編を寄稿させていただきました。個人的に最大の見所は、本作のイラストひとつひとつに片桐さんがつけてくれたコメントだと思っています。ともあれ、興味のある方はぜひ。

 朝の挨拶分がまあけっこうたまってはいますが、今回はこれのみで。というわけで新刊の紹介でした。

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by tsukasa-kawa | 2017-11-25 23:45 | 新刊紹介

新刊紹介・他

 拍手レス
>画集にある短編小説は、本編の後にストーリーですね。期待されます。王になった後、ティグルと戦姫たちの物語でしょうか? by 김영재
 ネタバレになってしまうので詳しいことはお話しできませんが、だいたいその通りです。楽しんでもらえたらと思います。

>もうじき魔弾最終巻ですね。毎度本当に楽しく読ませていただいてるので終わるという興奮と終わってしまうという寂しさと半々であります。
開けゴマは今や情報社会において半ば常識となった情報もまた財であるという事を昔なりに教えとして残すものだったのかもしれませんね。

 6年半もの間、魔弾につきあってくださって本当にありがとうございます。最終巻の発売まであと数日ですが、期待にお答えできる出来であればと。開けごまについては、その可能性もありそうですね。「アリババと40人の盗賊」の後半も、盗賊たちの情報を上手く手に入れたモルジアナが活躍する話でした。
 
>こんにちは。自分も昔から疑問に思っていましたが、胡麻ではなく、護摩なのではないかと考えています。祈祷ですね。秘密の呪文を訳すときに、護摩にしたのでは、と。根拠は何もないですが(苦笑) by 神崎みさお
 現地の言葉ではごまをシムシムと言いますが、シムシムには他の意味もあるのではないか、何らかの祈りの言葉に由来するのではないか、という説もあるそうです。ある種の文字や言葉が魔除けの力を持つという考えは、地域や文化の中にいまでも根強く残っていますし、その考えもおおいにありだと思いますよ。

 やあやあ一週間ぶり(ぬけぬけと)。更新しようしようとと思っていたのですが、どうも細かい用事がぱらぱらとあって落ち着かず、急な寒さからの疲れなどもありまして、なんだかんだ今日に至ってしまいました。いや、ごめんなさい。告知とかいろいろあるんですけどね。
 というわけで、もう5日前になってしまいましたが、17日は富士見ファンタジア文庫の発売日でした。
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石踏一榮  ハイスクールD×D24
      堕天の狗神 -SLASHDOG-

 石踏さんが二冊同時刊行ですよ。アニメ新シリーズも決まったハイスクールD×Dは表紙の通り白猫と黒歌回、リアスチームとヴァーリチームの戦いが繰り広げられます。そしてD×Dと世界観を同じくする新作、といっていいのかな、11年前に出した作品をリブートしたSLASHDOG。こちらはD×Dの4年前の世界のお話のようです。興味を持たれたら是非。

 そして、拙著「魔弾の王と戦姫」18巻の見本をいただきました。
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 今週末25日(土)発売となります。こうして並べてみると、長い戦いであったとあらためて思います。その戦いにつきあってくださったみなさん、ありがとうございます。どうか最後までともに歩んでいただければと。

 さて、もう一ヵ月近く前になりつつありますが、グリム童話から「かえるの王様」です。ものによっては「かえるの王子様」「鉄のハインリヒ」などと呼ばれることもあるとか。しかし、蛙ほど、マスコットになったり、不気味な生物として嫌われたりする生きものもなかなかないんじゃないでしょうか。服に張りついたり変身王子やったり宇宙軍人やったり、そういやクロノ・トリガーのカエルは頼もしい仲間だったなあ。脱線しました。「かえるの王様」はこんな話です。
 
 ある国の王女が、泉に金の鞠を落としてしまう。そこへかえるが現れて「自分を友達にして、同じ皿で食事をし、同じベッドで眠らせてくれるなら、鞠をとってあげる」と持ちかける。王女は鞠を取ってほしいあまり、うなずくものの、鞠を取ってもらうと、かえるをその場において帰ってしまう。
 王女がお城で食事をとっているところへかえるが現れ、約束の件を持ちだす。事情を聞いた王様は王女に約束を守るよう命じ、王女は仕方なくその言葉に従う。
 寝室に入ったところで、我慢の限界に達した王女はかえるをつかまえて壁に叩きつけるが、それによって呪いが解け、かえるは王様の姿に戻る。
 元かえるの王様は無礼を詫び、求婚して二人はめでたく結ばれる。
 翌朝、元かえるの王様の国から家来のハインリヒが迎えに現れる。ハインリヒは王様がかえるにされてから、悲しみで胸が張り裂けないように鉄の帯を巻いていたが、それが喜びによってはじけ飛ぶ。

 元かえるの王様(こう言わないとややこしくてね)さあ、友達に対する要求がちょっと高くないですかね。同じ皿で食事をして、同じベッドで眠るのはかなり親しくてもそうそうないのではないでしょうか。しかし、約束なのだからと王女の父が命じるあたり、このお話ではそれが普通なのかもしれません。たしかに筋は通っていて父親としても王様としても立派なのですが……。
 バージョンによっては同じベッドで寝るのではなく、かえるに王女がキスすることで呪いが解けるものもあるようですが、ロマンチックに見えて、ハードルが高くなっただけですよね、それ。呪いが解けたあとも、かえるとキスした女って陰口を叩かれることは必至です。
 壁に叩きつけるのはさすがにやり過ぎだとしても、王女の気持ちはわかります。かえるが喋るのは、まあそういう世界なのだとしても(そのこと自体には王女も驚いていないし)、ここまで図々しいと腹も立ちますよ。王女にとっては大事なものかもしれないので、たかが鞠とは言いませんが、かえると同じ皿で食事はきつい。

 それにしても、王様と、王様をかえるに変身させた魔女(バージョンによっては魔法使いともされているのですが、ここでは魔女にします)との間には、どのような因縁があったのでしょう。王様の行動から、呪いを解く方法を読み取っていくと「王女と友達になり、同じ皿で食事をし、同じベッドで眠り、潰される」となるわけです。実際には同じベッドで眠っていないので「王女の寝室で、彼女に殺される」あたりなのかもしれません。呪いが解けるまで事情を話さなかったことから、それについて言うことができない、というのもありそうです。
 考えれば考えるほど厳しい条件です。喋ることはできるし、かえるというだけで怖がられることもないので、友達になることは可能かもしれません。ですが、同じ皿で食事をするというところから、ぐっと厳しくなります。魔女は、おそらく王女の性格も読んでこの条件を設定したのでしょう。王女の父がいなければ、王様は詰んでいたのですから。
 もっとも、困難なものとはいえ、わざわざ条件を設定したあたり、魔女からは意地の悪さだけでなく、王様に機会を与えようという心情がうかがえます。それこそ魔女は、王様の友達であり、同じ皿で食事をし、同じベッドで眠る間柄であったのかもしれません。それなら、友達に対する要求が高いのも何となく理解できるのですよね。もとの話にはそういった点が書いておらず(書く必要もなかったのでしょうが)、不明のままですが。
 まあ、王女に対するアプローチを見ると、何かやらかしそうではあるんですよね、この王様。なりふりかまわず強引な手段とか普通にとりそう。
 王女と結ばれたあとも、はたしてめでたしめでたしと言える日々が続いたのか。このお話は、ここで終わっておいて正解だったのかもしれません。



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by tsukasa-kawa | 2017-11-22 02:47 | 新刊紹介

11月14日のお話

 ひとに魚を与えれば、一日の糧となる。ひとに魚を捕ることを教えれば、一生食べていくことができる。

 中国の老子が残した言葉といわれることもありますが「老子」にはこのような記述はないそうです。また、アフリカの諺であるともいわれますが、それについては確認できていません。もっとも、魚を捕って暮らすところであれば、たいていのひとがわかっていそうな、そして当たり前のこととして語り継いでいそうな気もします。まあ有名人が言ったっていえば不思議な説得力がつくからね。

 さて、いよいよ秋も深まってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。場所によっては紅葉もずいぶん見ごろになっているのではないかという気がします。僕は自宅からたいして離れていませんけどね! そんなことはいいんだ。

 それでは今宵はグリムより「星の銀貨」です。
 親はなく、住むところもなく、食べるものといえばもらいものの小さなパン、着るものといえばいま身につけているものだけ。そんな少女があてどもなく荒野を歩くところから物語ははじまります。
 少女はお腹をすかせた男に出会い、持っているパンを渡して歩きだします。しばらくして、寒がっている少年に出会い、自分の服を与えて歩きだします。またしばらくして、やはり寒がっている少年に出会い、自分の下着を与えます。
 少女がその場に立ちつくしていると、星が彼女のそばに降ってきます。少女の行いをよしとした神様の力によるもので、星の光は銀貨となり、少女は裕福に暮らしたのでした。

 俺たちゃ裸がユニホーム! たまにゃ夜風に凍えるけれど 善意 善意 善意ひとつが財産さ
 文字通りの裸一貫になるまで善意に対する報いがないとか、ちょっときつくないですかね。まあアダムとイブの時代から服には否定的だけどさ、神様。
 少女の行いそのものは素晴らしいと思います。ただ相手のためだけを思い、ほどこしを与える。自身も貧しい状況でそうそうできることではありません。見返りを求めないというよりも、見返りという発想自体がないのでしょう。ぶっちゃけ最初のほどこしの時点で銀貨の雨が降り注いでもいいと思うぐらいです。

 しかし。少女の思いやりとは別に、パンは食べてしまえばそれで終わりです。パンをほどこしてもらった男は、明日にはまた飢えるのでしょう。服をもらった少年は、つまり服すらなかった少年は、パンを得るために遠からず服を手放すかもしれません。下着をもらった少年も同じことです。彼らのもとに銀貨は降りません。
 少女は、そのとき自分にできる精一杯のことをしたのでしょう。ですが、明日も、明後日も生きていこうとするのならば、他の手段があったかもしれない。協力しあって動物なり魚なりを捕るような。そして、それは手元にパンがあるような余裕のあるときでなければ、難しいことでしょう。余裕がなかったらたいてい物質的な欲望の充足が優先されますからね。夢で腹がふくれるかい、同情するなら金をくれってもんですよ。
 もしも少女が男とパンをわけあい、助けあって、新たな食糧を得るための行動を起こしていたら、また別の話が展開していたでしょう。
 それを神様が賞賛するかどうかはわかりませんが、勇気や意欲を与えることは、ものを与えることに劣らないのではないでしょうか。



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by tsukasa-kawa | 2017-11-14 00:52 | 日常雑記

11月12日のお話

 ごまを開く、もしくはごまを開ける、って何でしょうね。
 だって、ごまですよ。ごま。殻を爪でこじ開けるんだとしても、それって割るとか潰すとかいうんじゃないかな……。
 ここでごまを開くってどういうことだよぉーっ、納得いかねえーっとギアッチョごっこをしてもいいんですが、深夜にテンションが無駄にあがってしまいそうなので早々に本題に入りましょう。はい「アリババと四十人の盗賊」です。

 お話は、真面目な働き者だけど貧乏なアリババが、近くの山で薪を集めていたところ、盗賊たちを発見してしまうところからはじまります。
 そこで盗賊の親分が洞穴に向かって唱える合い言葉(現地ではシムシム、貴様の門を開けろ、というらしい。シムシムとはごまのこと)を聞いたアリババは、盗賊たちが去ったあと、洞穴に向かって合い言葉を唱え、洞穴の中にあった財宝を手に入れ、大金持ちになるのです。
 この話を聞いたアリババの兄カシムはさっそく洞穴に向かい、財宝を手に入れたものの、洞穴の中で合い言葉を忘れてしまい、帰ってきた盗賊たちに殺されてしまうのでした。
 その後、このお話はアリババに対する盗賊たちの逆襲と、機転を利かせてアリババを助け、盗賊たちを撃退する女奴隷モルジアナの活躍が描かれ、めでたしめでたしとなります。

 冒頭で難癖つけましたが、開けごま、って呪文は非常にいいと思うんですよ。ごまっていったら、割るとか潰すとかするとかじゃないですか。言葉の組み合わせ的にちょっと思いつかないもの。だからカシムもうっかり忘れてしまったのでしょう。
 でも、四十人もいて秘密の呪文を聞かれてしまうのは正直どうよ。だって秘密の呪文ですよ。現代風に言うなら金庫の暗証番号ですよ。56513みたいな。部下にも知らせず自分だけが知っていることにしてもいいぐらいでしょうに、盗賊たちから身を隠しているアリババに聞こえるほどの声で呪文を言ってしまったのが、この親分の失敗です。本人が洞穴に意識を向けているとしても、三十九人を見張りに立たせるとかさあ。

 開けごまの呪文を、盗賊の親分が考えたのか、それとも誰かが洞穴ごと考えたのを親分が偶然知ったのか。それはわかりません。
 ですが、洞穴と呪文を親分は使いこなせませんでした。結局、財宝はそれを使いこなせるひとのもとに落ち着くということなのでしょう。情報過多の時代ですが、せめて自分のまわりの情報ぐらいは御したいものです。



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by tsukasa-kawa | 2017-11-12 01:18 | 日常雑記

11月9日のお話

 拍手レス
>最初期の赤ずきんは猟師が出て来ず狼が赤ずきんを食って終わりらしいですね
>これだとお話としては赤ずきんとお婆さんがヤバい怪物に遭って食われて死にましたとかいうなんの面白みもない話に…
>お話としての面白みの為にはヤバい怪物を銃という力でねじ伏せる猟師は必要だったのでしょうね。やはりこの世は力が最後に物を言う…!

 赤ずきんにブローニング銃を持たせたジェームズ・サーバーは正しかった!?
 おそらく最初期は、不用意に森に踏みこんではいけないという教訓を持った物語だったのでしょうね、赤ずきんは。ちょっと物語性を持たせようとして狼に知性と力を与えてしまったらバランスが大変なことに……。あるいは、寝こんでいたお婆さんが、元気だったら実はめっちゃ強いとかそんな語り継がれなかった設定があるのかもしれません。

 ところで、ニュースを見ていたら来週からは一気に真冬なみの寒さになるとかいわれて今から鬱々ですよ。まだ僕はスポーツにも芸術にも親しんでいないのに。あ、食欲についてはお肉を食べるなどしているので割と堅調です。
 天気についてさらっと流したところで、10月の宿題をまたひとつかたづけるとしましょうか。イソップから「ろばを売りに行く親子」です。
 タイトルだけでは首をかしげるかもしれませんが、話を聞いてみたら、聞いたことがあるという方もいるかもしれませんね。ざっとこんな感じです。

 昔々、父親と息子がろばを売りに行くことにした。
 二人でろばを引いて歩いていると、通りすがりのひとから「ろばに乗りもせず、歩いているなんてもったいない」と言われた。
 それもそうだと思い、父親は息子をろばに乗せたが、通りすがりのひとから「元気な若者が楽をして、父親が歩くなんて」と言われた。
 それもそうだと思い、父親がろばに乗ったが、通りすがりのひとから「子供を歩かせて自分が楽をするとはひどい父親だ」と言われた。
 それもそうだと思い、今度は二人でろばに乗ったが、通りすがりのひとから「二人も乗るなんてろばが可哀想だ。楽に運んでやればいい」と言われた。
 それもそうだと思い、二人はろばの脚を棒にくくりつけてひっくり返し、二人で棒を担いで運ぼうとした。ろばは暴れて川に落ち、死んでしまった。

 正解はひとつ!じゃない!!
 この親子は途中でぶち切れてもよかったんじゃないかな。余計なお世話じゃけえ!とか何とか言って。
 興味深いのは、通りすがりのひとたちの意見は、最後のものを除けば間違ったものではない、というところでしょうか。そして、このような、複数の正解が用意されているものというのは世の中にけっこうあると思います。もちろん、正解がひとつだけという問題もあるでしょうが。

 あえて教訓を求めるとすれば、自分の意志、考えをはっきり持っておくということになるでしょうか。
 ひとの意見を聞き入れることは大切ですし、それについてはこの親子の態度は美点といっていいでしょう。最後の意見についても、まあ意見そのものに問題はなかったと思いますし。
 ただ、この親子はろばを売りに行くわけです。できれば高値で売りたいわけです。たぶん。
 それには、ろばをあまり疲れさせないで市場で元気に見せるか。ひとを振り落とさないろばだとアピールするためにどちらかが乗るか。あるいは、あえて二人で乗っていき、ろばの頑丈さを見せつけるか。いろいろ考えられると思います。それについて決めていれば、取り入れる意見とそうでない意見をわけることができたのではないでしょうか。

 何を目的とするか。そのために何を優先すべきか。僕もそうですが、ひとはあらゆる場面で迷いがちです。有用な意見があれば、それをどんどん取り入れてしまいたくなります。取り巻く状況も刻一刻と変わりますからね。正解はまだまだいっぱいあって、それらを解き明かすために冒険も必要になるでしょう。
 ただ、それによって当初の目的から外れては、多くの場合ろくな結果になりません。
 そういったことを、このお話は伝えたかったのかもしれません。
 まあ正解はひとつじゃないだろうけれどね。



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by tsukasa-kawa | 2017-11-09 23:59 | 日常雑記

11月8日のお話

 ネーズーミーが出たぞー!
 ネズミの脅威といったら、さいとうたかおのサバイバルがやはり群を抜いて上手いというか恐ろしく描いていると思うんですよ。食糧を食い荒らし、相棒のフクロウを叩き潰し、昼夜かまわず少年を脅かすネズミの大群。結局、少年はねぐらを放棄するしかありませんでした。まあ対処しようがねえっすよアレ。現代でもネズミっておっかないし。二次元でも別の意味でおっかないし。そりゃあ二十二世紀の猫型ロボットも地球破壊爆弾を持ちだすってもんですよ。ドラえもんは おどろいて からだが まひした!

 まあネズミについて話すのはこれぐらいにしておいて「ハーメルンの笛吹き」です。
 有名な話なのでみなさんご存じだと思いますが、ドイツはハーメルンの町にネズミが大繁殖し、にっちもさっちもいかなくなっているところへひとりの笛吹きが現れ、謝礼をくれるならと人々と契約し、笛でネズミの群れを誘導して川へどぼん。しかし町の人々はネズミの脅威がなくなったら契約を忘れて出てけ出てけの大合唱。笛吹きが再び笛を吹くと、今度は町の子供たちが笛吹きに誘導され、彼とともに町を去ったとさ。とっぴんぱらりのぷぅ。と、そんなお話ですね。

 笛吹きに連れ去られた子供たちの行方はわかりません。町の外にある洞穴へみんな入っていき、その洞穴は内側から閉ざされ、誰も二度と戻ってくるとはなかった、とも、一人か二人だけが帰ってきて、この話を語り継いだともいわれています。
 なぜ、笛吹きは子供たちを連れ去ったのか。
 話を見るだけならば、町の人々が約束を守らなかったため、報復として連れ去ったのでしょう。まして町の未来を担う者たちをがばっと(といっても130人らしいので根こそぎというほどではないと思うけども)連れ去ってしまえば、町の衰退は避けられません。生まれたばかりの子供がそこそこ大きくなるのに10年、そこから町を支えるひとりの若者として成長するまでにさらに5~10年と考えると、おっそろしい話です。

 子供たちが連れ去られた、ということについてはさまざまな説があります。東方への移民団に参加した、十字軍に参加した、流行病(ネズミと絡めてペストを示していると思われる)で亡くなったのを、笛吹きを死に神になぞらえてこう表現した、などなど。
 さまざまなバージョンの旅立った説についてですが、ハーメルンの子供たち、というのは江戸の町人を江戸っ子と呼ぶような比喩表現であって、実際は青年に相当する男女が新天地なり冒険なりに賭けたんじゃないの、という考えのようです。

 とはいえ、それならどうしてそう語り継がれなかったのか、というのが不思議ではあります。すごい笛吹きに誘われて、子供たちが夢と希望を抱いて東へ旅立った……という話にすることに、何か不都合でもあったのでしょうか。子供たちを売買(児童を奴隷として売り買いするのは、当時では割とあることだった)したのだとしても、何百年後かに書き綴るならともかく、隠すようなことではないはずです。

 流行病の婉曲的な言い回しでない場合。
 この記録を残した者にとって、子供たちは笛吹きによって連れ去られたのでなければいけなかったと、そう考えることはできないでしょうか。
 たとえば、と想像をふくらませてみます。町にとって不名誉なことは、子供たちが大人に愛想を尽かすことでしょう。大人たちはネズミをろくすっぽ退治できず、笛吹きとの約束も守らないという二重の醜態を見せました。子供たちは、この町に、あるいは自分たちに未来がないことを漠然と感じとったのかもしれません。
 一方で、子供たちから見れば笛吹きはヒーローです。大人たちが手をこまねいていたネズミを、たやすく一掃したのですから。頼もしく見えたのではないでしょうか。町を捨ててついていくと決意した可能性はあります。まあ、ネズミが一掃されても、それだけネズミがはびこった=衛生環境的にアレな町ってのは変わってないでしょうからね……。もちろん、子供たちに見限られた、なんて記録に残すのはつらい、それなら連れ去られた、と書いた方がいい。
 先に書いた通り、想像です。ですが、もしかしたら、ハーメルンの笛吹きはそういうお話だったのかもしれません。



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by tsukasa-kawa | 2017-11-08 23:58 | 日常雑記

新刊告知・他

 やっほい、十何日かぶりー!(いけしゃあしゃあと
 原稿とかあってしばらく更新を中断していましたが、その間に見に来てくださった方はごめんなさい。10月分を残しまくっている間に11月も一週目が終わってしまっていて愕然としていますが、ぼちぼち再開します。
 まずは新刊のご紹介をさせてください。
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 お待たせしました。拙著「魔弾の王と戦姫」18巻。今月25日(土)発売となります。最終巻です。
 2011年4月に1巻を出したときは、ここまで長く続くシリーズになるとは思っていませんでした(そもそもシリーズになるかどうかさえわからなかったので1巻に1ってついてないし)。最後まで書ききることができたのも、みなさんの応援のおかげです。本当にありがとうございます。
 語りたいことはたくさんあるのですが、それは発売後にとっておくとして、もうひとつご紹介を。
『魔弾』の9巻からイラストを手がけてくださった片桐雛太さんの画集が同じく25日に発売します。
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 文庫に収録されていたイラスト群はもちろん、書き下ろしやイベント冊子に描いていただいたイラストなども収録されています。詳細はこちらを。
 原作者というおいしい立場から、すでに中を見せてもらっていますが、片桐さんのコメントもあり、見応えのある一冊に仕上がっていると思います。ちなみに、短編小説を一本、寄稿させていただいています。本編の後日談となるものですね。興味を持たれたらぜひ。

 さて、紹介を終えたところで、ペローまたはグリムより『青ひげ』です。
 三人の兄を持つ娘が「青ひげ」と呼ばれる大金持ちの男に求婚されるところから物語ははじまります。青ひげには、妻にした女性がたびたび行方不明になっているというあからさまにいやな噂があるのですが、彼の熱意に根負けして、娘の父は求婚を承諾してしまうのですね。
 青ひげが大金持ちであるのは本当で、新婚生活は不自由なく順調だったのですが、ある日、青ひげが「何日か留守にするので鍵を預ける。屋敷の中であればどこを見てもいい。ただし、ある部屋だけは開けてはいけない」と言って出かけるのです。
 もちろん娘は好奇心に負けてその部屋を見てしまうのですが、部屋の中には青ひげの妻だった女性の死体があったのです。驚いた拍子に娘は鍵を落としてしまい、鍵には死体の血がついて洗っても落とせず、その血がもとで、帰ってきた青ひげに言いつけを破ったことを見抜かれ、あわや殺されかけるのですが、そこへ駆けつけた兄たちに助けられ、青ひげは死亡し、娘は助かるのでした……。

 好奇心に負けてえらい目にあうという話は、古くからいろいろなものがあります。日本昔話ですと鶴の恩返しなどがそうですね。
「青ひげ」もそれらに漏れず、娘に対してあからさまに好奇心を煽っています。鍵を渡し、見てはいけないと言い、留守にする。鍵を渡されなければ、あるいは見るなと言われなければ、娘はそれほど気にしなかったのではないでしょうか。
 もっとも、これについては「娘が自分の言いつけを守ってくれるか見極めようとした」と見るか「言いつけを破ると見込んで積極的にお膳立てをした」と見るかで見方は変わってくると思います。金持ちは疑い深いから試したがるんですよねえ(思いこみです。
 それにしても不可解なのは娘の行動です。先妻(ということでいいんでしょう)の死体が見つかった時点で、もうなりふりかまわず逃げていいところですよ、この屋敷。季節とか先妻が行方不明になった時期とか書かれてないけど、新婚生活期間も考えればあきらかに腐ってるじゃん。ぶっちゃけ部屋を開けなくても腐敗臭でなんとなくわかりそうじゃない。部屋中に備長炭スメルの脱臭剤でもまかれていたんでしょうか。
 その点を考えると、好奇心に負けるとえらい目にあう、のではなく、危険を承知していながらぐずぐずしているとえらい目にあう、という、別の意味で現実的な教訓を、このお話は伝えている気がします。



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by tsukasa-kawa | 2017-11-07 23:59 | 新刊紹介