11月12日のお話

 ごまを開く、もしくはごまを開ける、って何でしょうね。
 だって、ごまですよ。ごま。殻を爪でこじ開けるんだとしても、それって割るとか潰すとかいうんじゃないかな……。
 ここでごまを開くってどういうことだよぉーっ、納得いかねえーっとギアッチョごっこをしてもいいんですが、深夜にテンションが無駄にあがってしまいそうなので早々に本題に入りましょう。はい「アリババと四十人の盗賊」です。

 お話は、真面目な働き者だけど貧乏なアリババが、近くの山で薪を集めていたところ、盗賊たちを発見してしまうところからはじまります。
 そこで盗賊の親分が洞穴に向かって唱える合い言葉(現地ではシムシム、貴様の門を開けろ、というらしい。シムシムとはごまのこと)を聞いたアリババは、盗賊たちが去ったあと、洞穴に向かって合い言葉を唱え、洞穴の中にあった財宝を手に入れ、大金持ちになるのです。
 この話を聞いたアリババの兄カシムはさっそく洞穴に向かい、財宝を手に入れたものの、洞穴の中で合い言葉を忘れてしまい、帰ってきた盗賊たちに殺されてしまうのでした。
 その後、このお話はアリババに対する盗賊たちの逆襲と、機転を利かせてアリババを助け、盗賊たちを撃退する女奴隷モルジアナの活躍が描かれ、めでたしめでたしとなります。

 冒頭で難癖つけましたが、開けごま、って呪文は非常にいいと思うんですよ。ごまっていったら、割るとか潰すとかするとかじゃないですか。言葉の組み合わせ的にちょっと思いつかないもの。だからカシムもうっかり忘れてしまったのでしょう。
 でも、四十人もいて秘密の呪文を聞かれてしまうのは正直どうよ。だって秘密の呪文ですよ。現代風に言うなら金庫の暗証番号ですよ。56513みたいな。部下にも知らせず自分だけが知っていることにしてもいいぐらいでしょうに、盗賊たちから身を隠しているアリババに聞こえるほどの声で呪文を言ってしまったのが、この親分の失敗です。本人が洞穴に意識を向けているとしても、三十九人を見張りに立たせるとかさあ。

 開けごまの呪文を、盗賊の親分が考えたのか、それとも誰かが洞穴ごと考えたのを親分が偶然知ったのか。それはわかりません。
 ですが、洞穴と呪文を親分は使いこなせませんでした。結局、財宝はそれを使いこなせるひとのもとに落ち着くということなのでしょう。情報過多の時代ですが、せめて自分のまわりの情報ぐらいは御したいものです。



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by tsukasa-kawa | 2017-11-12 01:18 | 日常雑記

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