4月1日の話

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 漫画版「魔弾の王と凍漣の雪姫」第1話及び第2話+描き下ろしイラスト、ニコニコ静画さん内「水曜日はまったりダッシュエックスコミック」にて好評連載中です! ティグルとミラの再会や、ミラのあんなシーンなどを漫画で見ることができまする。
 次回は3日後の4月4日(土)に掲載予定です。嘘ではございません。もうしばらくお待ちください。

 さて、4月1日ですね。正直この日に更新するとなったら、もう「またかよ」と言われようが「どうせやらないんだろ」と言われようが「予想はついてんだよ」と言われようがやらないわけにはいきますまい。(カチンコの鳴る音)



 ティグルヴルムド=ヴォルンが10歳のときのことである。

 ブリューヌ王ファーロンは国内外の貴族を招いて狩猟祭を催した。場所は、ブリューヌの王都ニースの東にあるヴァンセンヌの狩猟場だった。
 父ウルスに連れられて狩猟祭に参加したティグルは、側近たちの目を盗んでこっそり抜けだしてきたレグナス王子と出会った。
 ティグルは野鳥を仕留めて弓の腕を見せつけ、驚く王子に気分をよくして、さらにその鳥を焼いて振る舞った。焼きたての肉をかじった王子は笑顔で言ったものだった。

「焼きたての、あたたかいものを食べたのは、はじめてだ」


 ばれた。


 狩猟祭から10日後、ティグルと父は王宮に呼びだされ、恐ろしい形相をした宰相ボードワンにそれはもう、胃に穴が3つか4つ開くのではないかと思うほど説教された。
 最後にボードワンはこう告げた。

「ティグルヴルムド卿。そなたを王子の従者に命じる。よもや嫌とは言うまいな」

 消耗しきってメンタルが溶けかかっていた父子に断れるはずはなく、ティグルは王宮に住みこみで王子に仕えることとなった。
 ヴォルン家の格を考えれば、ド田舎の地主の息子が大都会の超一流企業に役職つきで入社するような大抜擢だったのだが、周囲は笑って受け流した。「犬を飼ったようなものだ」という認識だったのだ。

 ティグルは最初のうちこそ緊張しっぱなしだったが、数日もすると慣れた。
 王子は優しいし、弓の腕を見せれば素直に感心してくれるし、勉強や礼儀作法の講義の時間こそつらいものの、その時間を除けばあまり束縛されずに市街にだって出られるからだ。
 王宮の役人たちや貴族諸侯、騎士たち、侍女らは自分を蔑むが、気にならなかった。
 それに、少しずつだが味方や友人もできた。
 ティグルに同情した者、同じように弓を使うことで蔑まれている小姓や、王宮に仕えている騎士の従者、市街でよく話をする者たちなど。
 王子は王宮から出られない分、ティグルの話を楽しんで聞いたが、ティグルが女の子と会ったという話をすると、途端に不機嫌になるのだった。
 そのたびにティグルは「殿下はたくさんのご令嬢や貴婦人と歓談されているではありませんか(歓談という言葉は最近覚えた)」と言うのだが、そうすると王子はますます不機嫌になるのだった。
 ティグルが王子に仕えるようになって1年が過ぎたころ、二人の関係を大きく変える事件が起こった。
 王子が誘拐されたのだ。
 ティグルは数少ない友人たちの力を借りて、最後にはひとりで誘拐犯たちを追い詰め、弓で射倒して王子を救出した。幸い、王子に怪我はなかった。
 王宮へ帰る途中、血と泥にまみれた王子を無理矢理着替えさせたティグルは、気づいてしまった。

「で、殿下……。殿下は……お、女の子だった、のですか?」

「レグナスというのは男を装うための名です。私の本当の名は――レギン」

 陰謀、暗殺、戦争、冒険、生まれる伝説、よみがえる神話、落ちる城、嵐の海、広がる世界に迫る危機……

「魔弾の王と聖冠の姫」


 以上、エイプリルフール小話でした。
 やらないよ?


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by tsukasa-kawa | 2020-04-01 23:00 | SS

ライトノベル作家川口士のブログです。「魔弾の王と極夜の輝姫」他、発売中です。よろしくお願いします。


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